BUN HACK

起業を目指す高校生の備忘録

自由と感謝を実感した3日間

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高校一年の夏、僕の両親と妹は、久しぶりにおばちゃんの元気な姿を見るため長崎へ旅立った。本当は僕も行くべきだったのだが、塾の模試と軽音部の発表会が近いという理由から断った。出発当日、母は、火の元の注意と生活習慣が乱れないようにと僕を諭しつつも「元気でね」といつもの笑顔を見せ、3日間のお小遣いとして3000円を渡してくれた。家族を家の前で停まっているタクシーまで見送り、僕は家に帰った。

そして3日間にも及ぶ人生初の一人暮らしが始まったのである。

1日目

僕はとりあえず録画していた映画を片っ端から見ることにした。普段なら朝っぱらから映画なんて見ていたら母に怒られるのだが、この3日間だけは事情が違う。好きな時間に映画を見てもご飯を食べても、風呂に入っても何一つ注意されないし邪魔もされない。まさに圧倒的自由を高校生にして手に入れたのだ。映画を立て続けに3本見た後、なんだか腹が減ってきたので、近くのセブンイレブンでサンドウィッチとおにぎりを買ってきて家で食べることにした。いつもと変りないその味に僕は「やっぱおにぎりはうまいな~」なんてどーでもいいことを呟きながら、お茶を飲みつつ5分弱で完食した。そこからソファに寝そべり、これから始まる「一人暮らし」に期待を寄せつつも、家族のいないこの大きな家で、3日間も一人で暮らさなければならないという、ちょっとした試練に不安を覚えていた。両親は共働きなので、土日の午前中はよく妹と二人きりになることが多い。だから両親が家にいないという状態は慣れていたつもりなのだが、いざ妹すらいない状態となると少し心細い。男子高校生なんだから強い気持ちにならなければならないのだが、ここ最近は物騒なニュースも多いし、自分の家の近くでも空き巣被害があったことから、当時の僕は今以上に臆病になっていたのかもしれない。そうこうしているうちに日が沈み、あたりは段々と暗くなってきた。僕はとりあえず防犯だけはきちんとしようと思い、玄関の鍵はもちろん、あらゆる部屋の窓の鍵を閉め、シャッターが下ろせるのであれば全て下した。そうすると外気の騒音が遮断されるので、部屋の中は妙にしんみりとした空気になってくる。僕はその空気に耐え兼ね、テレビをつけることにした。夏時のテレビは、熱さを紛らすためと称して、心霊モノの番組が多い。いつもは家族と見ている心霊モノでも、一人で見るとなると流石に怖くなる。しかもたまたま見た瞬間が、運悪く幽霊の顔がはっきりと見える時だっため、即行でチャンネルを変え、お笑い番組を見ることにした。「相変わらず最近の芸人はつまらないな。」と思いつつも、僕のお気に入りの芸人の一人である東京03が出たときには、かなり笑ったことをよく覚えている。東京03は小さいころから好きで、角田のボケに逆ギレでツッコム飯塚と、それを冷静な眼差しで見つめる豊本がとてつもなく面白いし、他にはない面白さだとも思っている。時間が流れるのは早いもので、時計を見るともう夜中の10時を回っていた。いつもなら全然眠たくないのだが、今日は昼寝をしていないのと、僕以外誰もいないという状態があまりにも新鮮だったため、どっと疲れが出始め、僕はそのまま寝てしまった。

2日目

日の光で目覚めた僕は、一瞬なぜ自分がリビングで寝ているのかという状態に困惑しつつも「あ~そうか誰もいないんだった」と気づき、ちょっと安心したせいか二度寝をしてしまった。再び起きたときには、時計は13時を過ぎていた。流石に寝すぎたと思った僕は、すぐ風呂場へ行き、42℃という熱めのお湯で全身を洗い、歯を磨いて朝ごはんとも昼ご飯ともつかない食事をとることにした。食事と言っても冷蔵庫にある卵とソーセージをフライパンで焼き、それと食パン2枚だけの食事だが、栄養バランスにうるさい母もいないので、何も問題はない。そして食べ終わった皿をシンクに置いたまま、ソファに寝転がった。皿を洗わなくても注意されないという非日常対して「自由」ということを意識しつつも、その一方で、今まであーでもないこーでもないと口酸っぱく言われていた2日前の日常がどことなく懐かしく感じられるから、少し不思議な気持ちになった。今までこういう経験をしてこなかったせいか「一人暮らし」というものが凄く自由であることに驚き、想像以上に楽しいことも僕は感じていた。今までの人生では感じることが出来なかった「自由」を、今とてつもなく謳歌している。そんなことを思いつつも、身の回りの家事や洗濯、朝昼晩の食事を全て母一人でやっていたことに対して「僕は何もしてこなかったんだな。」と反省する気持ちとともに、改めて今置かれている状況がどれほど幸せなのか・どれほど恵まれているのかを強く考えさせられた。

「お母さんありがとう」「お父さんありがとう」

こんなに短くて、こんなにも簡単な言葉が口から出てこない自分がとても嫌になった。今までの人生を振り返って、はっきりと口に出したことが何回あっただろうか。いや、言った回数を記憶しているならば、まだましな方で、僕は言った記憶すら覚えているか怪しいし、言ってないのかもしれないとまで思っている。そんな息子に対して、母親父親は怒るわけでもなく、毎日変わりなく接してくれた。そして僕はいつの間にか、それが「当たり前」だと感じるようになり、ついには「当たり前」ということすらも感じなくなった。

「僕は息子として最低だ」「僕は人間として最低だ」

これを強く思った。世の中でこれほど親に感謝しない人間も珍しいだろう。朝起きて朝食が用意できている状態も、今着ている服が清潔なのも、Yシャツがいつもアイロンがけされているのも、すべて「当たり前」じゃない。誰かのおかげがあったからこそ、今の生活が成り立っているわけで、そこを忘れてはいけない。でも今、そこに気づくことが出来た。そうして僕は、今までの自分と打って変わって、自分なりの感謝の気持ちを伝えようとして、廊下の雑巾がけから、庭の草むしり、ガラス磨きに自転車の錆び取りなど、考えられることを夜中の3時までずっとやった。これでもかとやった。やりすぎるくらいやった。そして僕はあまりの疲労と空腹で寝てしまった。

3日目

「しまった!寝過ごした!」

はっと目が覚め、瞬発的に起きた僕は、まず汗まみれ汚れまみれの顔と体を洗い、腹ごしらえをすることにした。思えば昨日の昼から何も食べていない。最初はセブンイレブンで弁当でも買おうかと思ったが、それじゃ昨日の自分と変わっていないことに気づき、家族のためにカレーライスを作ることにした。カレーライスを作る具材は冷蔵庫に揃っていたので、ルーの箱の裏に書かれている作り方を見ながら、途中タマネギの刺激に目がやられつつも、なんとか1時間ほどでカレーライスを作ることができた。家族は夕方の便で羽田に着き、そこから2~3時間ほどかけて家に到着する予定だ。おそらく腹も減っているだろうし、疲れてもいるだろう。カレーライスは完成したから晩飯の準備はOK。つぎに風呂掃除を始めることにした。浴槽の汚れから、鏡の水垢まで一生懸命に掃除した。そしてお風呂のスイッチを入れ終了。夜ご飯もお風呂もすべて終わった。家族到着まで残り1時間。僕はなんだか緊張し始めていた。久しぶりに家族の顔を見るから、という理由もあったが、今までの自分がしていたことと正反対のことを一生懸命にやったために、変な心配はされないだろうか、怪しまれないだろうか、という不安が募ってきたからだ。別に怪しいことはしていないし悪いこともしていない。だけど普段しないことをすると変に不安に思ってしまう僕が昔からいた。今回も同じパターンのようだ。

「ガチャッ」

家族が帰ってきた。僕はとっさに2階へ隠れた。なんだか恥ずかしかったからだ。するとリビングの方から母の驚く声とともに僕を呼ぶ声がした。リビングに向かってみると、そこには満面の笑みを浮かべた母の姿があった。

終わりに

僕は3日間という短い期間でしたが、初めて「一人暮らし」というものを体験しました。世間一般で言われている一人暮らしとは少し違うけれど、好きな時に好きなことが出来るという、一人暮らしを語る上での最大の醍醐味を垣間見ることができて、一人暮らしをすることにとても憧れをもつようなりました。それとともに、今まで「当たり前」のように感じていた日常は決して「当たり前」ではなく、母や父のおかげあってこそ成り立っているものだということを強く実感し、そして改めて感謝することが出来ました。このように、一人暮らしから得られるものはとても大きく、一人になってみることで、気づくことがたくさんあることも分かりました。なので、一人暮らしをまだ経験したことのない方は試しに経験してみてください。きっと素敵な発見をすることができるはずです。